お侍様 小劇場

    “たとえばこんな非日常” (お侍 番外編 77)
 


        
(…の続き)



 そうこうするうちにも、リビングへと続く通廊の遠く。人の気配が沸き立っての、こちらへ近づきつつある足音や声が聞こえて来。小娘のように落ち着かないのはみっともないが、威容がないのも何ともしがたい。寝そべっていたのよりは身を起こし、美しい贄
(にえ)が運ばれてくるのを、ほくそえみながら待ち受けたれば。

 「…奥様。」

 堅い扉を小気味よくノックする音に重なり、彼女へと直接仕える配下の面々の束ね、長年の務めから勝手をよく知る家令長の畏まった声がし、どうぞと応じればそのまま滑らかにチャコールブラウンの扉が開いた。庭へと向いた大窓が天井間近まである開放的なリビングは、家族やごく親しい人々を招く広間も兼ねた空間なので、大ぶりの調度を並べても遜色がなかったほど広く。戸口周りの間合いも、そこに待ち合いの間を取れるほどの余裕があるのだが。かっちりとした体格の男衆が数人ほども居並ぶと、さすがに密集感は増すようで。いかにもな揃いの黒づくめではないものの、どの彼もダークスーツと総称されそうなスーツ姿の面々が居並ぶ奥から、白い小ぶりの手が掴み出されたのへと、夫人の双眸がちろりと光る。高揚する気持ちが押さえ切れぬか、横座りをしていての座面へ上げていた足を降ろすと、今にも身を乗り出さんという格好へと座り直しており。元からは一重であるらしい、腫れぼったいまぶたをそれでも随分と引き上げて見開かれた眼差しの先へ、お待ち兼ねの存在がようやっと今、引き出されたのだが。

 「暴れるようならば身の拘束も考えておりましたが、
  淑やかな見栄えに見合ってそれは大人しいお方でしたよ。」

 取り上げたのだろ携帯電話を、手近なサイドボードの上へと置いて。少々打ち沈んだ表情の青年の肩をなお引き、前へと押しやる家令殿で。少女のころから綺麗なものばかりがそりゃあお好きだった奥様の欲求に、こたびも立派に応えられたという充足感でか、のっぺりしたお顔がずんと相好を崩しておいで。心許ない様子でいるうら若き虜囚へ、さあさご慈愛を注いでやって下さいませとでも促す代わりか、そこから後じさりで退出しようとかかった彼らだったものの、

 「…ちょっと待って。」
 「は。」

 奥様から掛けられたのは、ねぎらいのお声…にしては、やや堅いそれであり。畏れ多くもとお顔を拝せば、何とも怪訝そうなお気持ちの表れか、薄くなられた眉をきゅうとお寄せで。肉薄な口許をも曲げておいでだったところから、ぽつりと発せられたのは、

 「…この子、誰なの?」
 「は、名前の方はまだ。島田という姓の家におりましたが。」

 1分1秒でも早くとの仰せから、どの家人かは厳密にはまだ突き止めておりませぬ…と、勿体ぶって続けかけたのへ、

 「違うの。私が訊いているのは、こんな子は知らないということ。」
 「はい?」

 あ、しまった。やってはならない不遜な聞き返しをしてしまったと。頬が引きつりかかった家令の感情をますますのこと焦らすかのように、勘気の強そうな奥方がすっくと立ち上がったそのまま、こちらへ向かって歩みを進める。直々に叱り飛ばしてやろうという勢いにも似ていたがため、居合わせた面々の間に微妙な緊張感が走ったものの、

 「確かに綺麗な子よねぇ。金の髪で、眸も…まあまあ赤いなんて珍しいこと。」

 そんな彼らなぞ眼中にはなかったか。値踏みでもするかのような不躾さで、突き出された青年をジロジロと眺め回し始める夫人であり。矯つ眇めつと見回されている側の人物のほうでも、あからさまに…彼のゲージで言うところの“顕著な”態度でもって、不機嫌そうに眉を寄せつつ、相手をじろじろと睨み返しておれば。そんな見返しをどう解釈されたものなやら、ふふんという笑みに薄い口許を緩ませた夫人が、骨の浮いた指を突き出して来、細い顎を下からツンと、その指先で掬い上げられた。

 「まあ、この子で我慢しないでもないのだけれど。」
 「…っ。」

 人様のお顔をモノ扱いとはと、これへはさすがにムッと来たか、

 「…誘拐行為だけでは足りぬのか。」

 低められた声は、言葉少なではあれ、威圧というおまけを大層滲ませたそれだったので。命じられる側の人間にはなかなかの効果があったらしい。彼を取り巻くように立っていた男衆らが、ついのことだろが…一歩以上はその身を引いて姿勢を正し、揃って畏まってしまったほどであり。身長差では余裕で勝っていた青年の方が、切れ長の目許を故意に眇めて、見下しの視線を送ったことが…それはさすがに奥方の側へも伝わったものか、

 「あら。大きく出ましたこと。」

 肌のお手入れは入念らしいが、それでも醜悪な笑い方しかして来なかった蓄積は無残なもので。着ているもので何とか身元を支えられているが、安物をまとったならそのままそれなりの人々の中へと埋没しそうな種の、薄っぺらな笑みを挑戦的にひけらかした初老のご婦人。まだまだ青二才のひよっこのくせにと思うてか、余裕は崩さぬままにて こうと言い返している。

 「覚えていないの? あなたは自分のお家から連れ去られたのよね?
  それはつまり、自宅を知られているということ。
  しかも、あっと言う間にさらわれたのよ?
  ご家族が同じ目に遭うかもしれないってこと、どうして想像しないのかしら?」

 勝ち誇ったように言う彼女には、今度こそそれは判りやすくも吐息をついて見せ、

 「略取の次は脅迫か。」

 犯罪行為をわざわざそちらから並べてくれようとはなと。勿論のこと、愕然としてじゃあなく、呆れ返ってしまっての吐息をついた…虜囚こと久蔵殿だったりし。彼女が“あれあれ? この子じゃあなくってよ”と人を取り違えていることへ気づいて驚いたのは、自分が七郎次の方ではなかったからだろうというところまで。逆上っての総ての事情を、こちらさまこそ重々承知だったりする彼であり。

 “……。”

 いつぞやの芸能関係者のスカウト騒動へ、都心の繁華街じゃああるまいにとの不審をい抱き、木曽の草らに探索を命じたところが、こちらの悪趣味なご婦人の存在に辿り着いたのが、昨年のまだまだ紅葉もまばらだった秋口の頃だったろか。見目のいい男子を見初めては、強引に自宅や別邸へとお誘いし、夜会や茶会へ連れ回しての見せびらかすためだけに拘束する。当人の生活なぞ知ったことではないというフォローのなさのままに、半年か1年かをもてあそび、そののち飽きればそのまま放り出すという、相手の人格完全無視のとんでもなく傲慢な遊びを繰り返している奥方であり。完全に外界から遮蔽し切って軟禁する手口が恐ろしいほどに見事だったので、これまで表沙汰になった例はないらしく。自身の年が嵩むほど、相手をずんと若い子へと瀬踏みをするようになっていった辺り、相手へ完全服従を強いる傾向が強まっていることが窺えて、何とも性
(たち)が悪いったらない所業。そんな夫人が新しい“愛人”にと目をつけたのが、どうやら七郎次であるらしいとの察しをつけた久蔵としては。なりふり構うなと護衛担当の草らにも命じ、魔手を遠ざける手を打つだけ打って来たものの。諦めるどころか却ってムキにさせるばかりと判っての、とうとう…そうは見えなかったが堪忍袋の緒が切れた久蔵。遠回しな回避じゃあ埒が明かない相手なら、ここはいっそ何かで懲りさせるのが一番だと。きっぱりと手を引かせるべく、獲物からの逆襲を体験させて差し上げようと、自ら乗り出した彼であったらしくって。大人しくも神妙に構えていたのも、この本拠地を突き止めるため。そういった目的でもなけば、こんな素人連中あっさりと薙ぎ払っていたほどに腕の差もあるというに。知らぬ身の浅はかさ、依然として尊大な構えを解かぬ夫人であり。

 「何を偉そうな物言いになっているのかしらね。」
 「あんたが誰かもこっちは承知だ。
  元○○大臣だった氏の息女、
  現●●省次官の奥方の伯母で、◇◇流華道の家元の姉上。」

 相手の語尾も消え去らぬうち、日頃寡黙な彼にしては滔々と、言い立てて差し上げたデータに間違いはないようで。ぐっと言葉を飲んだところへと畳み掛けるように、そこへと付け足したのが、

 「学芸世界の大御所、日本画の大家の▽▽氏の後見を務めていたくらいだから、
  審美眼に自信があったのが、こんな格好で使われようとはな。」
 「…っ、何を判ったような言い方して。」

 これはさすがに急所であったか、夫人の語気が初めて弾けたので…ニヤリと笑った久蔵だったが。その絵師殿のモデルを長年務めていたものが、いつしかお声掛かりがなくなってからのこのご乱行…というコトの順番だったのへは、これでも一応黙っておいてやったのに。
「こっちこそ言わせてもらえば、手も無く連れ去られた分際で、何を偉そうにしているのかしら。」
 よほどのこと、自尊心を傷つけられたということか。狡猾そうな強気のお顔を取り戻し、落ち着き払ったこの若造へ何とか一泡吹かせんとしてのこと、脅しの文句を並べ直す彼女であったりし。先程サイドボードへ置かれた携帯を、節立った手でもてあそびながら、
「此処に取り込まれてしまったからには、外への連絡も出来やしない。」
 そんな空威張りも効かないわよ残念ねぇと、ほくそ笑んだ口許を…ぱしりと叩いたのが、何の呼びかけもないままに乱入した誰かのお声。

 「ウチの久蔵殿を見くびってもらっては困ります。」

 怒りを滲ませておいでなせいか、日頃の甘い嫋やかさが半減している低さが凄みとなってて ちと怖いそのお人こそ、

 「あ……。」
 「シチ…っ?!」

 相手が相手で、しかも驚きようが勝ってのこと。自分を取り巻く状況も忘れての、ふらふらっとそちらへと踏み出しかけた虜囚の気配へと。そこは好きにさせるものかと…制すためにだろ家令殿が延ばして来た手を、何の配慮もないまま薙ぎ払った久蔵で。気もそぞろになりかけていた間合いだったものだから、指先掴んで ぶんと一振りという、簡単ではあれ 加減を知らない対処を取ったのが徒となり、

 「ぎゃあっっ!」

 畏まることと忍従の美徳という、従者の家系の人間が最初に骨身へと叩き込まれる躾けをもくつがえすほどの、凄まじい絶叫上げてしまった初老の御仁の悶絶ぶりであり。それへと怯えた人々が…今度こそは夫人も数のうちになっての一歩引いたことから、すっぽりと空いた“花道”のような空隙へ、素直に踏み出した次男坊。さっきの会話にもあったことだが、別段、拘束されていた訳じゃあなし、何の支障もないまま すたすたと歩みを運んでいった先には。彼が出て来たときの格好と同じ、そちら様もまた淡い色合いのカーディガン姿という七郎次が、いつになく凛々しい姿勢ですっくと胸張り立っておいで。ただ、

 「……シチ?」
 「シチ、じゃあありません。」

 きりきりと吊り上がったまんまの眉は、間違いなく…無法を働いた連中のみならず、久蔵自身へも怒りの矛先が向いておりますと言わんばかりの感情を映したそれだったし。そんな彼の背後、広々としたサンルームもどきのポーチにいたのが、彼を連れ立って来たのだろう、

 「島田?」
 「無事か?」

 判っていようことをわざわざと訊く、こちら様はこちら様で微妙に何かしら楽しんでおいでらしい、人の悪そな笑みをその精悍なお顔へと浮かべた、彼らの総代、勘兵衛だったりし。何であなたまで居合わせるのかと、いやさ、そもそもどうして七郎次が此処にいるのだと。打って変わって今度は彼こそが色々と訊きたげな久蔵なのへ。こちら様は一応、出社時のスーツ姿、矍鑠としたいで立ちのままな勘兵衛がにんまり笑い、

 「シチさえ無事なら後はどうでもという策の甘さは、
  まま、大目に見ても30点というところかの。」
 「…っ。」
 「怒りたいのはこちらです。」

 そんな勘兵衛へ反射的に食ってかかりかける次男坊の肩を引き留めて。よくよく見やれば目許が赤いおっ母様、やっと覲
(まみ)えた愛しい和子のお顔を真正面へと持って来の、ほうと震える吐息をつくと、

 「高階さんや勘兵衛様から みな聞きましたよ?」

 こたびの一件の真相とか、本当だったら私が攫われるところだったのを見越してのこと、わざとにお揃いの恰好をしだしたり、お買い物だ何だへも、以前よりも無理を重ねて付き添い出したのだということもねと。そんな一大事からは無事に庇えて合格ながら、ご当人への説明が後回しだったというケア不足を勘兵衛から詰られた“30点”発言だったと、今やっと合点がいって。どれほど心配したことかと、突然の略取騒動とそれから、それを見送るしかなかった自分への後悔に苛まれたらしい七郎次から、

 「ご無事で、良かった……。」

 気を張っていたその緊張が解けたか、今度は涙ながらにすがりつかれたものだから。あわわと焦るあまり、背条が伸びている次男坊なのは…まま さておいて。

 「お初にお目にかかりますな、N沼老の奥方。」
 「その呼び方をされるのは心外ですわ。」

 よほどに親しい身内にしか使わせぬ呼称なのだろ呼び様を持ち出され、何でそんなことを知っているのかとその馴れ馴れしさへカチンと来はしたものの。年に見合わぬ長髪の、掴みどころのない風体をした見覚えのない壮年へ。だのに…その堂々とした押し出しのよさ、いわゆる鷹揚さは本物と判るからこそ逆らえず。派手な蘭のプリントをほどこされたガウンの襟元を合わせ直す夫人であり。
「それでなくとも、こんな風に案内
(あない)もなく押し込まれるなぞ言語道断。」
 身分不相応な存在からの無礼なら、きっと絶対に許しませんことよとの権の高さを何とか保とうとしておいでだったものの、

 「狼藉だったらお互い様だ。」

 勘兵衛の側とて、相手が女性でも引くつもりは毛頭ないらしく、
「これまで露見しなかったからといって、いつまでもいつまでもこのような非道を続けられるとお思いか。」
「…っ。」
 十人以上を数える被害者ならこちらで総てを把握済みだし、それにこの点をお忘れだ。これはれっきとした“刑事犯罪”にあたるので、立ち上げられるは賠償求める公判にあらず。起訴され、関係筋が保有するだろ書面へもその旨の科を記されて、永劫消えぬ“犯罪者”の烙印を押されてしまうほどの事態なだけに、

 「本家の大伯父様も、そうそう加佐山のご隠居も。
  到底庇い切れぬわと、呆れておいででございましたが。」
 「な…っ。」

 財界の大立者で、名前を口に出すのも憚られよう御大を、旧知の友のように持ち出した壮年であり。よほどの修羅場を踏み越えて築いたそれなのか、彫の深い精悍さと同じほど、知的で奥深い錯綜とを滲ませたるお顔が、くすんとほころんだのもいっときの稚気からか。深色の髪とスーツの印象が、彼をして黒々とした影を思わすとしたならば。それとは真逆の、淡彩を染ませた華やかな存在の二人ほど。彼こそがお目当てだった佳風も雅な青年と、そんな彼の身代わり演じたらしき子と。そちらの両人もまた、何ともつれない…冷ややかな目線をちらと寄越したのを最後にし、連れに促されてのとっとと退出を図る態なのが、そのまま我が身の凋落を物語ってもいるようで。

 「……奥様?」

 呆然とするばかりの奥方へ、あちこちの方面から縁切りも同然のお別れの書状が山ほど届くのは、その日の午後という迅速な運びであったとか……。





       ◇◇◇



 良からぬ筋による七郎次への詮索が、妙に厚さを増して来た旨は、木曽の草の陣営が気づいたのと同じころには、勘兵衛の耳へも駿河の草の方々の報告によって届いており。ただ、こちらはそうそう熱くもならぬままの“様子見”と構えていたところ、七郎次に近づく存在は何びとたりとも許せぬという気性の久蔵が、ムキになってゆくのが並行して報告されだして。こうなっては誰が何を言っても聞く耳を持つまいと、熱くなってた久蔵への最も無難な対処を執ったまでだと語った勘兵衛だったのへ。

 「勘兵衛様も勘兵衛様です。」

 自分が後見につくからと見守る方向ではなくってと…わざわざこんな荒ごとに仕立てずとも、他にも穏便な手立てはありましたでしょうにと。突然の急襲と久蔵の誘拐という、この一族の人間へだとて、まずは尋常ではない出来事の訪のいへ、いいように翻弄されたおっ母様。我家へ戻ってのやっと落ち着いたればこそ、ちょっとそこへお座りなさいというモードになって、過激な家人二人をお説教中だったりし。

 「久蔵殿も。携帯を取り上げられていても、
  発信機を身につけていたからと安心しておいでだったそうですが。
  小型の発信機では電波緩衝装置には太刀打ち出来ないのですよ?」
 「…っ。」

 劇場や映画館、最近ではATM機の周辺などで、携帯を使えないようにするよう、妨害の役目を果たす電波を流す装置というのが設置されている今日このごろ。そういうところをハシゴされていたならば、追跡も途切れた恐れが十分にあったと言いたいらしい七郎次であり。

 「それに、先に不法行為に走ったのは向こうさんではありますが、
  あの場で久蔵殿が…自力で脱出を図ってのこと大暴れをしたとして、
  負ってもいない怪我や損失という格好で被害届を出されたならば、
  久蔵殿は目に見えぬ色々でもっともっと縛られていたかも知れませぬ。」

 こたび勘兵衛様が切り札のように取り出した、大御所お歴々の名によっての執り成しが、そちらでも可能だったかも知れませぬが。要らない貸しを作るとロクな余禄がつかぬのもまた、世渡り上の権謀術数にはよくあること。今回は、夫人のしでかしたあれこれを黙っていて差し上げるという方向へ持って行けたとはいえ、妙な関わりが出来たのは事実ですし、後日後年、向こうから勝手に頼られてしまうかも知れませぬ。

 「殊に、
  先々で木曽の総代となられる久蔵殿にあっては、
  貸しも負い目も出来るだけ持たぬが重畳というものでしょうに。」
 「シチ…。」

 ともすれば、手放し教育の高階殿以上に、きっちりみちみちと叱言並べるおっ母様であり。いやあの、そこいら辺りは我々でフォローしますが…と言いたげな、当の高階さんにしても。此処で口を挟んだならば、そうやって甘やかすからとの叱責が飛んで来かねぬのを恐れたか。リビングの片隅にて、ただただ黙してお説教が済むのを待つばかり。ひとしきり大暴れした寒気団も、こたびの一騒ぎで気が済んだものか、来週には収拾撤退を始めるらしいと聞いているので。それでの日和のほころびに合わせ、こちらの山の神様も どうか勘気をお静めくださいますようにと。屈強で手練れな男衆らが、数人がかりで頭を垂れてた黄昏どきで。そろそろ終わりの山茶花が、生け垣にちらほらと名残りの赤を彩る春隣り。早よう暖かくなって、母御の気持ちも紛れてのほぐれればいいですねと、古梅の梢が苦笑に震えているようだった。




   〜Fine〜  10.01.14.〜01.15.

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  *甘やかすばかりの母上じゃあなかったらしいです。
   ……なんつって。
(苦笑)
   いつだったか、
   シチさんへの横恋慕をする存在が現れたら?
   というネタをいただいたのを、唐突に思い出しまして。
   (あと、シチさんが怒ったら?というご質問も。)

   護衛班の頑張りようは、
   盗撮禁止への徹底した対処という形でも発揮されております。
   ……他への悪影響は出なんだのかしらね。
(う〜ん)
   そして、護衛対象が一番強いってどうよという、
   微妙にお約束なシメでしたね、すいません。
   取るに足らない相手だったからこその、
   勘兵衛様の様子見でもあったワケですが。
   本気で人質にと久蔵さんなりシチさんなりが奪われていたのならば、
   こんなもんじゃあ済まなかろう。
   相手の屋敷を全崩壊さすほどの威力の総攻撃をかけかねません。
   周辺へは演習ですと言い切って、
   戦車やファントムで十重二十重に取り囲むんですぜ。おお怖い。

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